「急激な動悸や息苦しさに襲われるが、病院の検査では異常がないと言われた」
「胸がチクチク痛むため痛み止めを飲んだが、あまり変化がない」
「また発作が起きるのではないかという不安(予期不安)で、外出や仕事が怖い」
激しい動悸、息切れ、胸の痛み、めまいなど、心臓に関わる強い症状があるにもかかわらず、心電図や血液検査などをしても「心臓自体には異常が認められない」状態を「心臓神経症」と呼びます。
検査で異常が見つからないことで「大きな病気ではない」と安心する一方で、「では、この苦しさは何が原因なのか?」と原因不明のまま不安感が増し、そのストレスによってさらに自律神経が乱れ、症状が悪化してしまうという悪循環に陥りやすいのが特徴です。
主な原因としては、日常的なストレスや人間関係の悩み、環境の変化などによる「不安や緊張」が挙げられます。
これらが自律神経のバランスを大きく崩し、心臓の働きを過剰にコントロールしてしまうことで、様々な不調が引き起こされます。
「気のせい」「精神的なもの」と片付けず、心と身体の両面からバランスを整えるケアを始めていくことが大切です。
目次
西洋医学の視点
西洋医学における心臓神経症へのアプローチは、まず循環器内科などで詳細な検査(心電図、エコー、ホルター心電図など)を行い、狭心症や不整脈といった器質的な心疾患が本当に隠れていないかを除外することから始まります。
心臓に異常がないと診断された後は、症状が自律神経の乱れや心理的要因からきていると判断され、心療内科や精神科での治療が中心となります。
主に、過剰な不安や緊張を和らげるための抗不安薬(安定剤)や、動悸などの心拍数を抑えるβ遮断薬が処方されます。
また、患者様の中には「胸の痛み(胸痛)」を強く感じて、市販の解熱鎮痛剤(ロキソニンなど)を自己判断で服用される方もいらっしゃいます。
しかし、心臓神経症による胸の痛みは、筋肉や関節の「炎症」によるものではなく、自律神経の過緊張からくる「神経性の痛み」であることが多いため、一般的な痛み止めでは十分な変化を感じられないケースがほとんどです。
西洋医学と東洋医学(漢方)のアプローチの違い
西洋医学の治療は、抗不安薬で脳の緊張を直接和らげたり、β遮断薬で心拍をコントロールするなど、今起きている「つらい症状をスピーディーに抑える」対症療法を得意としています。
一方で東洋医学(漢方)は、「なぜ些細なストレスで自律神経が大きく乱れてしまうのか」「なぜ胸のあたりにエネルギー(気)が滞ってしまうのか」という、お身体全体のバランスの崩れに目を向けます。
東洋医学では、心臓神経症はストレスや過労によって、生命エネルギーである「気(き)」の巡りが滞ったり(気滞)、本来下へ降りるべき気が上へと突き上げてしまう(気逆)ことで、心臓付近に不調が集中している状態と考えます。
漢方薬によって、滞った気の巡りをスムーズにして自律神経を整え、過敏になっている心身の緊張を優しく解きほぐすことで、「動悸や息切れが起きにくい健やかなお身体のベース」をサポートします。
「精神安定剤を長く飲み続けることに抵抗がある」「病院で異常なしと言われてどうしていいか分からない」という方は、漢方薬で心と身体の根幹を整えていくことが非常に有効な選択肢となります。
漢方が考える原因
Reiyodoでは、心臓神経症の原因を東洋医学の観点から以下のタイプに大別し、お客様の体質や症状に合わせてオーダーメイドで漢方をお組みしています。
| 原因のタイプ | 具体的な状態・特徴 | 東洋医学(漢方)のアプローチ方向 |
|---|
自律神経の乱れ (ストレスの蓄積) | 日常的なストレスや環境変化の蓄積により、気の巡りが滞り(気滞)、交感神経が常に過緊張を起こしている状態。 | 「自律神経を整える漢方」を使用します。 心身の緊張を解きほぐし、ストレスに対する抵抗力をつけることで、乱れた自律神経のバランスを調整します。 |
心肺機能の過敏・亢進 (動悸・息切れ) | 自律神経の乱れから心拍のコントロールが上手くいかず、少しの刺激で激しい動悸や息苦しさを感じてしまう状態。 | 「動悸や息切れを鎮める漢方」を使用します。 心臓への過剰な負担を和らげ、胸苦しさや息を吸いにくい感覚を穏やかに鎮静させていきます。 |
予期不安とパニック (気の突き上げ) | 「また発作が起きるのでは」という強い不安から、気が上へと突き上げ(気逆)、過呼吸やめまいなどを引き起こしやすい状態。 | 「気を降ろし、心を落ち着かせる漢方」を組み合わせます。 上部にのぼった熱や興奮を静め、パニックになりやすい精神状態を安定させます。 |
【先生コラム①】『検査で異常なし』の落とし穴。胸の痛みとロキソニンの関係
担当薬剤師:武田隆芳(病院・調剤薬局での勤務経験あり)
心臓神経症でお悩みの方から、「胸がチクチク、ズキズキ痛むのでロキソニンなどの鎮痛剤を飲んでいますが、効きません」というご相談をよく受けます。
これは、痛みの原因が「炎症」ではなく、ストレスによる「神経の過緊張」や「筋肉のこわばり」だからです。
検査で異常がないのに症状が続くのは本当に辛いですよね。
漢方では、こうした神経性の痛みや違和感を「気(エネルギー)」の滞りと捉えます。無理に痛みを薬で抑え込むのではなく、気の巡りを良くして胸部の緊張をフワッと緩める漢方薬をお選びすることで、自然と胸のつかえや痛みが気にならなくなっていきます。
【先生コラム②】『また起きるかも…』予期不安の悪循環を断ち切る漢方
担当薬剤師:宮本貴美(調剤薬局・漢方薬局での勤務経験あり)
心臓神経症を長引かせる最大の要因は、「またあの苦しい動悸が起きたらどうしよう」という予期不安です。
この不安がさらなるストレスを生み、自律神経を刺激して発作を誘発してしまいます。
東洋医学では、心(精神)と身体は深く繋がっていると考えます。
自律神経を整える漢方薬は、単に動悸を鎮めるだけでなく、「些細なことで動じない、しなやかで落ち着いた心」を養うことを得意としています。
お身体のベースが整ってくるにつれ、「そういえば最近、動悸のことを気にする時間が減ったな」と実感される方がたくさんいらっしゃいます。
心臓神経症の症例経過
① 40代 女性(過呼吸・動悸・息苦しさ)
育児の合間に突然「過呼吸」に見舞われ、それ以降、心配事が重なると「動悸」を感じるようになりました。
病院の検査の結果、心電図には異常がないと分かり、ご相談いただきました。
「立ちくらみ」や「息苦しさ」など他の症状も伴っていたため、まずは「自律神経を整える漢方薬」をオーダーメイドでお出しいたしました。
【漢方服用開始から2ヶ月】 ご自宅でお過ごしの際は、気持ちが落ち着いてきているとのことでした。
【漢方服用開始から3ヶ月】 全体的に症状が落ち着いてきているため、同じ漢方で様子を見られることになりました。
【漢方服用開始から4ヶ月】 前月よりもさらに調子が上向きになってきたということで、減薬して様子を見ることになりました。
【漢方服用開始から6ヶ月】 体調は安定していますが、ぶり返しを防ぐために、引き続き漢方服用をご希望されています。
順調に改善が見られ安心いたしました。
②30代 男性(仕事中の動悸・息切れ)
仕事中に「動悸」や「息切れ」が気になって集中できないとのことで、ご相談をいただきました。
仕事のストレスから症状が起きている状態と判断し、「自律神経を調節する漢方薬」と「動悸や息切れを鎮める漢方薬」を組み合わせてお出しいたしました。
【漢方服用開始から1ヶ月】 体調は大分良くなってきているとご連絡をいただきました。
【漢方服用開始から2ヶ月】 お仕事中にも、動悸を気にすることなくいられるようになったとのこと。
【漢方服用開始から6ヶ月】 症状が起きるのではという心配(予期不安)からも解放されてお過ごしいただいているそうです。
順調に改善が見られ安心いたしました。
心臓神経症のお悩みに関するQ&A
心療内科で処方されている安定剤や、市販の鎮痛剤(ロキソニンなど)と漢方薬は併用できますか?
はい、基本的には併用していただいて問題ありません。
強い発作時や不安感が強いときは西洋薬でコントロールしつつ、漢方薬で「自律神経の乱れにくい体質」へと根本から整えていくアプローチは非常におすすめです。
現在服用中のお薬がある場合は、飲み合わせを確認いたしますのでお薬手帳をご提示ください。
心臓神経症に対してどのような漢方薬を使いますか?
お客様の症状や体質に合わせて、「自律神経を整える漢方」「動悸や息切れを鎮める漢方」などを主にご用意しております。
ストレスの度合いや、めまい・過呼吸などの付随する症状を詳しくお伺いした上で、最適な漢方をオーダーメイドでお組みいたします。
漢方薬を飲むと、どのくらいで動悸や不安感は落ち着いてきますか?
ストレスの蓄積度合いや生活環境によって個人差があります。
早い方では服用1〜2ヶ月で「気持ちが落ち着きやすくなった」「動悸の頻度が減った」と実感されますが、自律神経のバランスを根本から安定させ、予期不安を取り除くためには、まずは3ヶ月〜半年程度じっくりお続けいただくことをおすすめしております。
併せて読みたい関連疾患・お悩み
心臓神経症は、自律神経の乱れやパニック障害、睡眠、めまい、更年期障害などと密接に関わっています。
以下の記事も併せてご覧ください。
【自律神経失調症】(ストレス、プレッシャーによる心身の過緊張)
【パニック障害】(発作時の過呼吸、外出や発作が起きることへの予期不安)
【不眠症】(自律神経の乱れによる睡眠のお悩み)
【めまい】(気逆や気滞に伴うめまい)
【更年期障害】(ホルモンバランスの変化に伴う自律神経の乱れ)
漢方薬剤師 薬局長 武田 隆芳(たけだ たかよし)
実績:病院勤務4年・調剤薬局勤務8年の臨床経験 合計12年間
西洋医学の最前線で多くの患者さんと向き合う中で、薬で症状を抑えるだけではない「根本的な治癒」への渇望が芽生える。
・「身近な人の悩みにもっと深く関わり、本当に治る手助けがしたい。」
・「薬だけでなく、身体の内側から体質を変えていく感動を伝えたい。」
という強い想いから漢方の道へ。 現在は呼吸器や皮膚トラブル、精神疾患などを得意とし、漢方薬のご提案はもちろん、食事や生活習慣のアドバイスまで含めた「二人三脚のサポート」を行っています。
漢方薬剤師 宮本 貴美(みやもと たかみ)
調剤薬局、漢方薬局での勤務を経験
漢方以外にもアーユルヴェーダ・メディカルハーブ・アロマ・分子栄養学など幅広く学び、国際中医師も所持
関心のある疾患は、婦人科疾患、不妊症、皮膚疾患
【趣味】
美味しいお店巡り、ヨガ、旅行、読書