「咳やくしゃみをした瞬間に尿が漏れてしまう」
「急にトイレに行きたくなり、間に合わないことがある」
「お出かけ先でトイレの場所ばかり気になってしまう」
このような「尿漏れ(尿失禁)」は、ご自身の意思とは関係なく尿が漏れてしまう状態を指します。
一般的に女性に多く、年齢を重ねるごとに増える傾向にありますが、実は20代〜30代を含め、どの年代にも起こるデリケートなお悩みです。
主な原因としては、「加齢」「出産」「肥満」などによる「骨盤底筋」などの筋力の低下や、「膀胱」の機能低下が挙げられます。
また、ストレスなどによる「自律神経の乱れ」や、女性の場合は「ホルモンバランスの乱れ」も原因になります。
その他、「尿路感染症」「前立腺肥大」「前立腺がん」「認知症」「パーキンソン病」などの疾患が背景に潜んでいるケースもあります。
※本記事は、東洋医学的な視点からお身体の根本的な体質改善について解説するものであり、特定の疾患の治療や効果を保証するものではございません。
西洋医学の視点
西洋医学において、尿漏れの治療は症状のタイプ(原因)に合わせて行われます。
例えば、急な尿意を催す「切迫性尿失禁(過活動膀胱)」に対しては、膀胱の過剰な収縮を抑えるお薬(抗コリン薬など)や、膀胱の筋肉をリラックスさせて尿を溜めやすくするお薬(β3受容体作動薬)が処方されることが一般的です。
一方、お腹に力がかかった時に漏れる「腹圧性尿失禁」に対しては、低下した筋肉を鍛える「骨盤底筋体操」などの理学療法が指導され、症状が重い場合には尿道を支える手術(スリング手術など)が検討されます。
明らかな原因疾患(前立腺肥大症など)がある場合は、その病気に対する治療が優先されます。
また、西洋医学では服用中のお薬の影響(薬剤性)も考慮します。例えば、風邪薬(総合感冒薬)の一部や抗アレルギー薬には排尿に影響を与える成分が含まれることがあります。
さらに、頭痛や関節痛などでロキソニンなどの「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)」を常用している場合、それ自体が直接尿漏れを引き起こすわけではありませんが、慢性的な痛みや炎症によるストレス、あるいは胃腸への負担からくる全身の冷えや自律神経の乱れが、間接的に膀胱の働きに影響を与えているケースも存在します。
西洋医学と東洋医学(漢方)のアプローチの違い
西洋医学の治療は、「過敏になった膀胱の働きを薬で直接抑え込む」「緩んだ筋肉を手術で物理的に補強する」といったように、起きている症状や特定の臓器に対して素早く局所的にアプローチする対症療法を得意としています。
一方で東洋医学(漢方)は、尿漏れを単なる膀胱や尿道だけの問題とは捉えず、「なぜその機能が低下してしまったのか」という、お身体全体の気(エネルギー)・血(血流)・水(水分代謝)のバランスの崩れに注目してアプローチします。
漢方薬は、加齢や疲労によって弱った下半身のエネルギーを補って筋肉や臓器の働きを底上げしたり、冷えによって滞った血流を改善して過剰な収縮を防いだりします。
また、ストレスで高ぶった自律神経を鎮めることで、膀胱が本来の働きを取り戻せるようにサポートします。
一時的に症状を抑えるのではなく、「全身の巡りを整え、尿漏れが起こりにくい健やかなお身体の土台づくり」を目指すのが漢方の大きな特徴です。
漢方が考える原因
Reiyodoでは、東洋医学の観点から尿漏れの原因を大きく以下の3つのタイプに分け、お客様一人ひとりの体質や症状に合わせてオーダーメイドで漢方をお組みしています。
| 原因のタイプ | 具体的な状態・特徴 | 東洋医学(漢方)のアプローチ方向 |
|---|---|---|
| 筋力の低下 | 運動不足・出産・加齢などの影響で、尿道を締める役割を担う尿道括約筋・骨盤底筋などの筋力が低下している状態。 また、尿の貯蔵に関与している膀胱の機能そのものが低下している状態。 | 「筋力・膀胱の機能を高める漢方」を使用します。身体の土台となるエネルギーを補い、低下した筋肉や膀胱の働きを内側からサポートします。 |
| 冷えによる血流の滞り | 冷えによって血管が収縮し、膀胱の血流が悪化した状態。尿細管にも影響が及び、再吸収される水分量が減ることで普段より尿が多くなります。 また、膀胱や骨盤底筋が収縮しやすくなり、尿を溜めきれずに漏れてしまいます。 | 「血流を整える漢方」を使用します。身体を芯から温めて血流を改善することで、冷えによる過剰な収縮を防ぎ、水分の代謝バランスを整えます。 |
| 自律神経の乱れ | 膀胱周辺の筋肉は自律神経が大きく関わっています。 ストレスなどによって自律神経が乱れ、副交感神経が過度に興奮することで、膀胱周辺の筋肉が意図せず収縮し、尿を十分に溜められなくなっている状態。 | 「自律神経を整える漢方」を使用します。高ぶった神経を鎮め、ストレスによる心身の緊張を和らげることで、膀胱の働きを正常な状態へ導きます。 |
【先生コラム①】『我慢』が膀胱を過敏にする?自律神経と排尿トラブルの関係
担当薬剤師:宮本貴美(調剤薬局・漢方薬局での勤務経験あり)
尿漏れと聞くと「年齢のせい」と思われがちですが、実は若い方でもお悩みの方は少なくありません。
その大きな要因の一つが「ストレスによる自律神経の乱れ」です。職場や家庭でのプレッシャー、あるいは「また漏れてしまうかも…」という不安自体がストレスとなり、自律神経が過敏になります。
すると、膀胱が少しの尿でもギュッと収縮してしまい、急な尿意(切迫性尿失禁)を引き起こしてしまうのです。
漢方薬で心身の緊張を解きほぐし、リラックスできるお身体づくりをしていくことで、不安なくお出かけできるようになる方がたくさんいらっしゃいますよ。
【先生コラム②】「冷えは下半身の大敵!血流を巡らせて膀胱を温めよう」
担当薬剤師:倉本智里(製薬会社・調剤薬局での勤務経験あり)
「冬になるとトイレが近くなる」という経験はどなたにもあると思いますが、慢性的な「冷え」は尿漏れを悪化させる大きな原因になります。
体が冷えて血流が滞ると、膀胱や骨盤周りの筋肉が硬くこわばり、弾力を失ってしまいます。
また、冷えからくる頭痛や生理痛、関節痛などのために鎮痛剤(ロキソニンなど)を頻繁に飲んでいると、胃腸が荒れてエネルギー不足に陥り、さらに体を冷やしてしまうという悪循環に陥ることも。
漢方で身体の芯から血流を巡らせて温めることで、筋肉をしなやかに保ち、根本から尿漏れを防ぐ力を育てていきましょう。
尿漏れの症例経過
① 40代 女性(出産・加齢に伴う腹圧性尿失禁)
出産後から、くしゃみや重いものを持った時にヒヤッとすることが増え、最近になって頻度が多くなり、ご相談いただきました。
加齢と出産による骨盤底筋などの筋力・機能低下と考え、「筋力・膀胱の機能を高める漢方薬」をお組みしました。
服用開始から1ヶ月半ほどで、少しずつ「我慢できる感覚」が戻ってきました。ご自宅での骨盤底筋体操も併せて行っていただいた結果、3ヶ月後には日常生活で尿漏れを気にすることがほとんどなくなりました。
② 50代 女性(冷えと更年期が重なった混合型尿失禁)
更年期に差し掛かった頃から手足の冷えが強くなり、急にトイレに行きたくなることや、力を入れた時の尿漏れの両方にお悩みでした。
冷えによる血流の滞りが主な原因と判断し、「血流を整える漢方薬」をお出しして、下腹部をしっかり温めるようアドバイスしました。
服用して3週間ほどで足先の冷えが和らぎ、夜間にトイレで起きる回数が減少。
2ヶ月目には膀胱の過剰な収縮が落ち着き、急な尿意や尿漏れの頻度が減少しました。
③ 30代 男性(仕事のストレスによる切迫性尿失禁)
仕事の責任が重くなり、会議中や通勤電車の中で「トイレに行きたくなったらどうしよう」という不安から、急激な尿意と軽い尿漏れを繰り返していました。
強いストレスによる自律神経の乱れと考え、「自律神経を整える漢方薬」をお組みしました。
服用から1ヶ月で精神的な緊張やイライラが落ち着き、リラックスできるようになりました。
心に余裕が生まれたことで膀胱の過敏な反応も治まり、2ヶ月半経過する頃には、電車や会議中の不安が解消されました。
尿漏れのお悩みに関するQ&A
病院で処方された過活動膀胱の薬や、頭痛薬(ロキソニンなど)と一緒に漢方薬を飲んでも大丈夫ですか?
基本的には併用していただいて問題ありません。
病院のお薬で今ある辛い症状をコントロールしながら、漢方薬で「冷え」や「自律神経の乱れ」「筋力不足」といった根本的な体質改善を進めていくアプローチは効果的です。
ただし、成分の重なりなどを確認いたしますので、現在服用中のお薬がある場合は事前にお知らせください。
漢方薬以外に、日常生活で気をつけるべきことはありますか?
. 東洋医学では「冷え」が下半身の機能低下を招く大きな原因と考えます。
まずは下腹部(おへその下あたり)や足首を冷やさないように心がけてください。
また、過剰な水分摂取や、カフェイン・アルコールなど膀胱を刺激する飲み物は適量に控えることも大切です。
どれくらいの期間で良くなりますか?
症状の重さや体質によって個人差はありますが、早い方では服用1ヶ月程度で「トイレの回数が減った」「冷えが和らいだ」といった変化を感じられます。
低下した筋力や膀胱の機能を根本から底上げし、再発しにくい体質を作るためには、まずは3ヶ月〜半年程度じっくりと継続されることをおすすめしております。
併せて読みたい関連疾患・お悩み
以下のお悩みも関連が強い症状ですので、併せてご覧ください。
【頻尿】(膀胱機能の低下や過敏さにより、尿漏れと併発しやすい排尿のお悩み)
【心因性頻尿】(ストレスや不安から膀胱が過敏になり、急な尿意や漏れを引き起こす状態)
【更年期の諸症状】(女性ホルモンの低下に伴う骨盤底筋の緩みや自律神経の乱れ)
【自律神経失調症】(排尿をコントロールする自律神経の乱れによる膀胱の過剰な収縮)
【泌尿器疾患】(過活動膀胱や前立腺肥大症など、尿漏れの背景に潜む疾患)
【尿漏れ】(腹圧性や切迫性など、さまざまなタイプの排尿トラブルとケア)
【夜尿症】(睡眠中の抗利尿ホルモン不足や、夜間の膀胱コントロール低下による漏れ)
漢方薬剤師 宮本 貴美(みやもと たかみ)

調剤薬局、漢方薬局での勤務を経験
漢方以外にもアーユルヴェーダ・メディカルハーブ・アロマ・分子栄養学など幅広く学び、国際中医師も所持
関心のある疾患は、婦人科疾患、不妊症、皮膚疾患
【趣味】
美味しいお店巡り、ヨガ、旅行、読書
漢方薬剤師 倉本 智里(くらもと ちさと)

製薬会社、化粧品会社、調剤薬局勤務などを経験。
その他、体の内側から体調を整える食養生や腸活の知識を習得。
関心のある疾患:皮膚疾患、婦人科疾患
【趣味】
菌活、腸活、カフェ巡り