「耳が詰まった感じ(耳閉感)がして、自分の声が頭に響いて聞こえる」
「風邪を引いた後から、耳の奥に水が溜まっているような違和感が続く」
「耳鼻科でお薬(ムコダインなど)を飲んでいるが、なかなかスッキリしない」
耳管狭窄症とは、風邪や副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などで鼻の奥に炎症が起きることで、耳と鼻をつなぐ管である「耳管」の入り口がふさがってしまう状態を指します。
同じように耳が詰まる「耳管開放症」はストレスや急激な体重減少で発症することがありますが、耳管狭窄症は主に「炎症」によって耳管がふさがることで耳閉感などの症状が起きるという違いがあります。
放置して耳管がふさがったままになると、鼓膜の内側に滲出液がうまく排泄されず、「滲出性中耳炎」を発症しやすくなるため注意が必要です。
主な原因としては、鼻水や膿が耳管に流れ込んだり、鼻と耳がつながっている部位の粘膜で炎症が起きて腫れたりすることで、耳管がふさがりやすくなることが挙げられます。その他にも、鼻の奥に生じた腫瘍などが原因となって耳管が狭くなるケースや、最近では逆流性食道炎の胃酸が耳管に影響を与えている関連性も指摘されています。
西洋医学の視点
耳管狭窄症に対する西洋医学(耳鼻咽喉科など)の視点では、まずは鼻や耳管の炎症を鎮め、粘り気のある鼻水や膿を出しやすくすることで、耳管の通りを物理的に改善することが治療の基本となります。
一般的なアプローチとして、鼻水や痰の粘り気をサラサラにして出しやすくする去痰薬(カルボシステイン、ムコダインなど)や、アレルギー性の炎症を抑える抗ヒスタミン薬、ネブライザー治療などが用いられます。また、炎症が強い場合には抗生物質やステロイド点鼻薬が処方されることもあります。お薬で改善しにくい場合は、鼻から管を入れて耳管に空気を送る「耳管通気療法」という処置が行われることもあります。
西洋医学と東洋医学(漢方)のアプローチの違い
西洋医学の治療は、ムコダインなどの去痰薬で鼻水の性状を改善したり、耳管通気療法で直接空気を通したりするなど、今起きている「耳の詰まり」や「局所の炎症」に対して速やかにアプローチする対症療法を得意としています。
一方で東洋医学(漢方)は、「なぜ鼻や耳の奥に炎症が起きやすく、粘り気のある鼻水が停滞してしまうのか」という根本的なお身体のバランスの乱れに目を向けます。漢方薬によって、長引く粘膜の炎症(熱)を優しく冷まし、耳の奥に滞ってしまった余分な水分(鼻水や滲出液など)をスムーズに排出させることで、人間が本来持っている粘膜の健やかな状態を取り戻すサポートをします。
「耳鼻科の薬を飲んでもぶり返してしまう」「風邪を引くたびに耳が詰まりやすい」という方は、西洋医学の治療と並行して、漢方薬で根本から「炎症が長引きにくい・水が滞りにくい体質づくり」をしていくことが非常に有効な選択肢となります。
漢方が考える原因
Reiyodoでは、耳管狭窄症の主な原因を東洋医学の観点から以下のタイプに大別し、お客様の体質や症状に合わせてオーダーメイドで漢方をお組みしています。
| 原因のタイプ | 具体的な状態・特徴 | 東洋医学(漢方)のアプローチ方向 |
|---|---|---|
| 耳管・粘膜の炎症 | 風邪やアレルギー性鼻炎などにより、耳管の粘膜が腫れたり、熱を持ったりして耳管の入り口がふさがれている状態。 | 「炎症を鎮める漢方」を使用します。粘膜の腫れや局所の熱を冷まし、耳管の通りをスムーズにするベースを作ります。 |
| 水分の停滞(痰湿) | 粘り気のある鼻水や膿が耳管周辺に停滞し、耳の奥に水が溜まったような強い耳閉感や自分の声がこもる症状が出ている状態。 | 「耳閉感を和らげる漢方」を使用します。 体内の余分な水分(痰湿)の巡りを整え、「炎症を鎮める漢方」と組み合わせることで排出を促します。 |
| 胃腸の弱り・免疫低下 | 胃腸が弱く、風邪を引きやすかったり、逆流性食道炎などの影響で慢性的に耳や鼻の不調を繰り返しやすくなっている状態。 | 症状に合わせて「胃腸を整える漢方」や「免疫をサポートする漢方」を組み合わせ、不調を繰り返しにくい土台を作ります。 |
【先生コラム①】耳の詰まり、実は2種類ある?耳管狭窄症と耳管開放症の違い
担当薬剤師:宮本貴美(調剤薬局・漢方薬局での勤務経験あり)
「耳が詰まる、自分の声が響く」というご相談をよくいただきますが、実はこれには大きく分けて2つの原因があります。
一つは今回お話ししている、風邪や鼻炎の【炎症】で管がふさがる「耳管狭窄症」。
もう一つは、ストレスや体重減少によって管が開きっぱなしになる「耳管開放症」です。
症状は似ていても、東洋医学から見ると原因が全く異なるため、使う漢方薬も正反対になります。
耳管狭窄症の場合は、まずは鼻の奥でくすぶっている「熱(炎症)」をしっかり冷まし、ドロドロとした鼻水を取り除いてあげることが第一歩となります。
【先生コラム②】長引く耳の違和感は『水』の巡りサインかもしれません
担当薬剤師:櫻井絵梨子(病院・調剤薬局での勤務経験あり)
風邪は治ったはずなのに、耳の奥でゴロゴロする感じや、膜が張ったような耳閉感だけが残ってしまうことはありませんか?
漢方では、このような状態を「水」が停滞しているサインと捉えます。
耳管の働きが落ちると、本来抜けていくはずの水分(滲出液など)が耳の奥に溜まり、中耳炎の原因にもなりかねません。
漢方薬には、利尿作用や発汗作用を通じて、耳や頭周辺に溜まった「不要な水」を穏やかに流し出す働きを持つ生薬がたくさんあります。
耳鼻科のお薬と併用しながら、体質から水の巡りを良くしていきましょう。
耳管狭窄症の症例経過
①30代 女性(風邪の後の耳の詰まり・自分の声が響く)
1ヶ月前に風邪を引いてから、鼻水は治まったものの「右耳の詰まった感じ」と「自分の声が頭の中で響く」症状が続き、ご相談いただきました。
耳鼻科でムコダインを処方されていましたが、スッキリしないとのことでした。
鼻の奥に微細な炎症が残り、水分の排出がうまくいっていない状態と考え、「炎症を鎮める漢方」と「耳閉感を和らげる漢方」をお組みしました。
1ヶ月服用していただいたところ、まずは「自分の声が響く不快感」が少しずつ和らいできたとのこと。
2ヶ月目には、耳に膜が張ったような詰まり感が抜け、耳鼻科の通院頻度も減ってお喜びです。
② 40代 男性(アレルギー性鼻炎からくる慢性的な耳閉感)
長年アレルギー性鼻炎を患っており、季節の変わり目になると鼻水が奥に流れ込み、決まって「強い耳閉感」にお悩みでご相談いただきました。
アレルギーによる粘膜の腫れと、粘り気のある水分の停滞が原因と考え、「炎症を鎮める漢方」と「耳閉感を和らげる漢方」をお組みしました。
1ヶ月の服用で、鼻の奥のネバネバした不快感が軽減し、耳への圧迫感が和らぎました。
3ヶ月継続していただいたところ、アレルギーの時期になっても耳が塞がる頻度が目に見えて減り、仕事への集中力も維持しやすくなったとご報告いただいています。
③ 50代 女性(耳の奥の違和感・中耳炎への不安)
数ヶ月前から「耳の奥に水が入っているような違和感」があり、耳鼻科で滲出性中耳炎になりかけている(耳管狭窄症)と言われご相談いただきました。
加齢や疲労による巡りの低下が影響していると考え、「耳閉感を和らげる漢方(水の巡りを整える漢方)」と、「体力をサポートする漢方」をお組みしました。
1ヶ月服用したところ、耳の奥のゴロゴロする不快感が引き、頭の重だるさもスッキリしてきたとのこと。
2ヶ月目には耳閉感がほとんど気にならなくなり、中耳炎への移行も防げて安心したとお喜びの声をいただいております。
耳管狭窄症のお悩みに関するQ&A
耳鼻咽喉科のお薬(カルボシステイン、ムコダインなど)と漢方薬は一緒に飲めますか?
はい、基本的には併用いただいて問題ありません。
粘り気のある鼻水を西洋薬で出しやすくしつつ、漢方薬で「炎症が起きにくい体質」や「水が滞りにくいベース」を作っていく方法は、大変相性が良くおすすめです。
飲み合わせの確認も行いますので、ご相談時にお薬手帳などでお知らせください。
どのような漢方薬を使いますか?
耳管狭窄症の漢方薬として、「炎症を鎮める漢方」や「耳閉感を和らげる漢方」などを主にご用意しております。
これらを、お客様一人ひとりの体質、鼻水の状態(サラサラかネバネバか)、胃腸の強さなどに合わせて、お体に合ったものをオーダーメイドでお組みさせていただきます。
ストレスで耳が詰まる「耳管開放症」かもしれないのですが、漢方で対応できますか?
はい、耳管開放症にも漢方薬は対応可能です。
耳管狭窄症が「炎症」を主な原因とするのに対し、耳管開放症は「ストレスによる自律神経の乱れ」や「疲労・体重減少による筋肉の不足」が原因となることが多くなります。
その場合は、気を補う漢方や自律神経を整える漢方など、全く別のアプローチをご提案いたしますので、ご自身の症状がどちらかわからない場合もまずはご相談ください。
併せて読みたい関連疾患・お悩み
以下の記事も併せてご覧ください。
【鼻炎】【副鼻腔炎】(鼻粘膜の慢性的な炎症や腫れに伴う耳管開口部の閉塞)
【めまい】(中耳の陰圧化や気圧変化に伴う内耳への負担と平衡感覚の乱れ)
【耳鳴り・めまい】(耳管のつまりによる中耳の開放不全や鼓膜の振動異常)
【自律神経失調症】(ストレスや過緊張に伴う耳管開閉筋の機能低下)
【更年期障害】(ホルモンバランスの変化に伴う粘膜の乾燥や水分代謝の乱れ)
漢方薬剤師 宮本 貴美(みやもと たかみ)

調剤薬局、漢方薬局での勤務を経験
漢方以外にもアーユルヴェーダ・メディカルハーブ・アロマ・分子栄養学など幅広く学び、国際中医師も所持
関心のある疾患は、婦人科疾患、不妊症、皮膚疾患
【趣味】
美味しいお店巡り、ヨガ、旅行、読書
漢方薬剤師 櫻井 絵梨子(さくらい えりこ)

病院・調剤薬局の勤務を経て漢方の道へ
関心のある疾患:婦人科疾患・不妊症
【趣味】
旅行・美味しいお店巡り